日本の子どもは平均して一年に7回も「風邪」を引いているそうです。そして、小児科で診察されるたびに抗生物質が処方されることが多いのですが、この抗生物質が、だんだん「効かなく」なってきているという無気味な現実をご存知でしょうか? 細菌が地球上に現れたのは約38億年前ですが、人類史上最高の発明と言われる抗生物質が発見されたのはわずか80年前のことです。ところが「耐性菌」がすぐに出現しました。以来、新しい抗生物質を作ると、新たな耐性菌が生まれるというイタチゴッコの状態が続いています。近年は、抗生物質開発に経営的魅力がなくなったのか、製薬会社による新規開発が少なくなっていますが、とにかく抗生物質は「細菌を殺す」だけなのです。薬にはメリットとデメリットがあります。細菌感染症においては、必須の治療薬であっても、不必要あるいは不適切な使用で患者が不利益を受けることがあります。人類にとって大切な資源である抗生物質を大事に賢く使っていくには、医療者まかせにせず、患者側が自己防衛できるだけの知識を得るとともに、国家的な戦略が必要だと笠井さんは主張し続けています。
笠井さんは大阪府出身。失恋をきっかけに富山大学医学部を1年間休学し、YMCAでのボランティア活動(こどもの野外活動支援、タイチェンマイでのワークキャンプ)にハマり、冷凍トラック運転手で自活するというモラトリアムを経験。その後復学したものの、どうしても学生生活になじめず、晴登雨読(晴れの日は山登り、雨の日は読書)で、最低の出席率と成績でギリギリ卒業。心を入れ替えて大阪の下町東淀川区淡路にある宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院で初期研修医としてボロ雑巾のように働き(本人談)、そこで感染症の権威・森川嘉朗氏に出会い、内科医・小児科医として勤務する。その後、千葉県こども病院麻酔・集中治療科、長野県立こども病院集中治療科医長として、主に集中治療室での重症患者の対応と院内感染対策、感染症診療コンサルテーションを行い、著書に『小児抗菌薬マニュアル』があります。今春からは“バイ菌”とより仲良くなる方法を研究するために、信州大学医学部病態解析分析学講座大学院で再び学究生活に入っています。豊かな人生経験による分かりやすい医学解説をお楽しみに! |