優れた殺陣には、演者自身の肉体を含めた武器の動かし方はもちろんのこと姿勢(構え)・足運びなどの立ち居振る舞い・演技としての流れの美しさが要求されます。現在、殺陣師としてはおよそ10人、アクショングループも10団体ほどが活躍しています。なかでも島口さんは自らをソードアーティストと称して独自の分野を開拓したほか、彼が率いる『剱伎衆かむゐ』は和太鼓や三味線などの和楽器はもちろん、ロックやトランスなどとのコラボレーションにも積極的に取り組み、英国エディンバラフェスティバルなど国際的な演劇祭や公演に積極的に参加しています。このため海外でも評価が高く、Q.タランティーノ監督の映画『KILL BILL』では、殺陣の指導・振付だけでなくクレイジー 88(MIKI)役にも抜擢されました。島口さんは1970年埼玉県生れ。日大芸術学部在学中に、松本幸四郎の歌舞伎座公演や市川猿之助のスーパー歌舞伎に出演したほか、尾上辰禄に殺陣の特別レッスンを受けたことがきっかけでこの道を極めることになったそうです。もともと、歌舞伎は争闘の場面の演技・演出である「立ち回り」を重要視して、楽劇としての様式化を完成させており、時代劇映画もそれを踏襲してきました。それを基本に、世界に誇れる美しい日本文化のひとつとして、パフォーミングアーツとマーシャルアーツを融合させた新しいアートに開花させたいと精進を重ねているのが島口さんです。
「自分は人間の殺し合いの表現である殺陣を通じて、現代の社会で見失いがちな絆や心を改めて知りました。相手の目を見、息を感じることから初めて自分自身が活きてくるということや、相手を思いやる心がないと観客を魅了する立ち廻りは完成しないということもです。かむゐを創り色々な人と出会えたことで、日本人が育んできた様々な美意識、素晴らしい感性に触れられた気がします。これからも素晴らしい出会いを求めて、想いを共有できる仲間たちと熱く表現を続けていけたらと強く願っております。」
日本舞踊七々扇流名取であり、新陰流剣術や空手の奥義も求道中という若き殺陣師に、型における伝統と新奇性へのこだわりや集団演技の難しさなどを、実演やビデオを交えて、楽しく紹介していただきます。
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