講演当日に発売日を迎える一冊の本があります。『オバマの本棚』(世界文化社)です。
書物は人間を形成すると言われます。ならば、“オバマをオバマたらしめた書物”を分析しようという企画が松本さんに持ち込まれたのが3月中旬でした。早速ホテルに缶詰となり、原書30冊を1ヶ月間で読破して原稿を書き上げるという荒業(神業)に取り掛かりました。
この時の心境を松本さんはブログ日誌に次のように記しています。
「私の英語道の基本は、尊敬する人にidentify(一体化)して、なり切ることだ。オバマの胎内巡りをすると決めたら、オバマ好みの本から音楽から映画(DVD)から、かたっぱしから吸収する。赤ワインを飲みながら2人でデイドリーム対談をする。共通点から入らず、相違点から近づこうとすれば、冷笑者(シニック)になりやすい。」「“オバマの英語”なら、どの出版社が手掛けても、売れる。リスクは少ない。しかし“オバマの本棚”となると、読者層が限られてくる。赤字になりやすい企画だ。絶対ムリな企画とわかっていても、これをオレがやらなくて誰がやる、という火のような情熱があれば巧くいく。」
結局、50冊以上に目を通し、図書館で『若き日のリンカーン』や『カッコーの巣の上で』など彼が好んだ映画のDVDをチェックし、さらに彼好みの音楽を買い漁っては歩きながらも聴くことで、大統領に至るまでの知の軌跡を探り、未来予測にまで至るという、いわばオバマの宇宙を俯瞰する一冊を書き上げたのです。
松本さんは1940年大阪生まれ。関西学院大学卒業後、日商岩井に勤務。海外渡航の経験なしに独力で英語を磨き、アポロ月面着陸時に日本で初めて同時通訳をした西山千氏に師事したことから、その推挙でアメリカ大使館の同時通訳者となり、後にNHKテレビ上級英語講座の講師。日本にディベートを広めたことでも知られ、英語教育や日本文化に関する130冊もの著作があります。今回は、「日本を知らずして英語を話すなかれ」「斬れる英語」など “英語道”についてもお話いただけることを期待しています。 (加藤和郎)
*自筆イラストによる松本さんのブログ http://plaza.rakuten.co.jp/eigodoh/diary
|