激動の昭和を生きたすべての人々に夢とロマンを与えてくれた偉大な夫婦歌手がいます。それは霧島昇さんと松原操(ミス・コロンビア)さんです。お二人は松竹映画『愛染かつら』の主題歌『旅の夜風』でデュエットして空前の大ヒットとなり、昭和14年に山田耕筰夫妻の媒酌により結婚。当時、“円盤(レコード)上の恋”として話題を呼びました。そして、戦前・戦中・戦後を通じて『十九の春』『一杯のコーヒーから』『誰か故郷を想わざる』『蘇州夜曲』『若鷲の歌』『りんごの唄』『胸の振り子』『チャイナタンゴ』など数多くのヒット曲を残しました。タイトルを見るだけで胸が熱くなってしまう人も多いのではないでしょうか。時代を共にした詩やメロディーは、その時代のあれこれを心のスクリーンに鮮烈に映し出してくれます。 大滝さんは、そのお二人の三女で、ご両親の没後25年目にあたる今年6月、青山にある菩提寺で「父母の歌を歌い継ぐ追善コンサート」を開きました。 若い頃はもっぱら外国の歌曲を歌っており、ご両親が亡くなられてからもしばらくは「両親の歌は両親の声で」と思っていましたが、ご自身が母親の引退した年齢になって始めて、歌を続けたかった母親の意思を継ぐ思いで、両親の歌を歌おうと決意されたそうです。 そして、つい先日のコンサートから「二代目 松原操」の名乗りを上げました。
大滝てる子さんは、東京音大卒。同研究科(オペラ科)修了後、13年間母校で後進の指導にあたりつつ、数々のコンクールで受賞。昭和56年ウィーンに留学し、ヒルデ・ツァーディック氏に師事。帰国後は再びコンサート活動を続け、平成7年にはウィーン・コンツェルトハウスで、ベーゼンドルファー・日本航空・講談社後援のコンサート「日本の心を歌う」を開き、現地の音楽関係者から絶賛されました。現在は日本の歌を中心にコンサート活動を続けていますが、レパートリーはオラトリオやオペラからポピュラーまでと幅広く、近年は「霧島昇・松原操父母の心を歌い継ぐ」と題して両親のヒット曲を歌うリサイタルも各地で展開されています。
ご両親の思い出やエピソードから昭和の時代を振り返ると共に、時代を映し、時代の風として流れた歌の力と魅力を素晴らしい歌声を交えてお話いただきます。 (加藤和郎)
*新冠レコード館には霧島昇655曲、松原操168曲が収蔵されています。
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